セールスイネーブルメントソリューションの設計

ソリューションの開発では、プロジェクトの基盤を計画する設計ステージが特に重要です。以下の4つのステップに従えば、確実にしっかりした設計を行えることがわかっています:

セールスイネーブルメントソリューションの設計のベストプラクティス

1. ステークホルダーを特定する

ソリューションのユーザーをそれぞれの役割の観点から考えることが役に立つことがわかっています:

セールスイネーブルメントのステークホルダー

システムのキーユーザーを特定したら、関与するチームをリストアップするチームマップにキーユーザーを組み込むことが役に立ちます。チームのニーズがこの展開でどの程度重視されるかに応じてチームを優先順位付けします。チームの代理で発言できる各チームの代表者の選択も行います。これらの代表者は、チームのコアメンバーとして、または計画、設計、検証のときの協議先となるリソースとして、ソリューションの開発に関与します。

以下に、世界中に子会社を持つ企業のチームマップの例を示します:

セールスイネーブルメントのステークホルダー

2. コンテンツをマッピングする

次に、キャプチャーしたいコンテンツについて考えます。

前のセクションで説明したように、営業担当者が必要とする可能性があるすべてのものをキャプチャーしようとするより、当初は最も重要なコンテンツに的を絞ることが重要です。この機会を利用してクリーンアップを行うこともできますが、ローンチ前にすべてのコンテンツを完璧な状態にしようと焦らないことを強くお勧めします。複数の無期限のコンテンツイニシアチブを抱えて身動きが取れなくなることはよくあります。家をリフォームしたことのある人なら、「これをやるのだったら、ついでにあれも…」という危険なフレーズをよく知っているでしょう。既に存在するコンテンツを見つけるための秩序立った方法をセールスチームに与えることは、たいていの場合、セールスチームの有効性を高めるための大きな第一歩になります。ソリューションの改善は永遠に続きます。それは「完了」することのない仕事です。

この作業の成果をコンテンツマップでキャプチャーします。ここに示す典型的な事例では、企業がセールス情報を8つのグループに分類することを決定しています。個々のタイプのコンテンツについて、コンテンツの発行に責任を負う人を示します。パブリッシャーはチーム(プロダクトマーケティングのようなもの)である場合も、1人の人間である場合もあります。所有者がチームである場合は、チームを代表する人が選択されています。可能であれば、1人の代表者を選ぶのが理想的です。そうすれば、個々の主要なタイプのコンテンツを深く理解している人がいることが保証されます。いずれにせよ、関与する人を管理しやすい人数に絞ってください。

セールスイネーブルメントのコンテンツマッピング

コンテンツをトップレベルグループにグループ分けする方法はたくさんあります。以下は最良の解決法を見出すことに非常に役立つことがわかっている経験則です:

たいていの会社では、主流のユーザーに適用される8~12個のトップレベルカテゴリーを目指すことが妥当です。

これはコンテンツを整理する数として十分ですが、セールスレップやパブリッシャーがどこを見ればよいかを把握するのに時間を浪費するほど多くはありません。ユーザーはリスト全体をざっと見て、適切な場所を見つけることができます。

主流のユーザー向けの適切なカテゴリーを設定したら、次に専門チームに対処します。

特定の役割、特定の地域などに特化した分野のコンテンツもよくあります。まず代表的な営業担当者に対して設計がうまく機能することを確認したうえで、それらの個別の要求事項への対処を開始します。

特化したコンテンツに関心のない人にとってわかりにくい可能性があるときは、多くの場合、特化したコンテンツを別個のエリアに分類することが最も適切です。そうすれば、特化したコンテンツを必要とする人は何を探せばよいかわかるし、特化したコンテンツが他のものと混ざっている状態が主流の営業担当者の目に触れることはありません。

グループは、セールスレップやパブリッシャーが理解できる直感的に明白なものにする必要があります。

見る人にコンテンツの場所を推測させるのは良くありません。グループをできるだけ曖昧でない明白なものにします。

トップレベルには頻繁に変わるものを配置しないようにします。たとえば、「現在の会計年度のマーケティングテーマ」は良い選択とは言えません。このテーマは毎年変わり、特定のコンテンツがそのテーマのどれに該当するかが、まったく明白ではありません。あるピッチデッキは「究極の柔軟性」あるいは「業界トップレベルのパフォーマンス」のどちらに近いのでしょうか。そのどちらでもないのでしょうか。あるいは両方に当てはまるのでしょうか。特定のグループ内のテーマにアイテムを割り当てることは非常に有用である可能性がありますが、どう工夫しても完全に明白にはならないグループをトップレベルに使用しないでください。

コンテンツの大半が1つのトップレベルカテゴリーに間違いなく当てはまらなければなりません。次のセクションで説明しますが、セールスサイクルのステージを構成モデルとして使用することが良くない考えである理由はここにあります。

各グループに対応する少数のパブリッシャーが存在するのが理想的です。

コンテンツのグループごとに取り扱う人が異なる場合は簡単ですが、多数の人が同じグループを管理している場合は問題が起きる可能性があります。少人数のグループが特定のコンテンツの集合に関して重要な意思決定を下した方が、必ずと言っていいほど、良い成果が得られます。

重要かつ独特な方法で整理されるコンテンツは、それに応じた方法で分類することを検討してください。

たとえば、ケーススタディについて考えてみましょう。多数のケーススタディが存在することはよくあり、多くの企業でケーススタディは大半のコンテンツと異なる方法で非常に注意深く整理されます。例を挙げれば、ケーススタディは、垂直業界別、顧客が所在する地域別、言語別、製品別、シナリオ別などの基準に従って整理されることがあります。

ケーススタディを必要とするセールスレップは、自分が何を探しているかを正確に理解しており、顧客に最もよく当てはまる特質を利用して素速く閲覧できることを望んでいます。ヨーロッパに所在する大企業は、自国と似通っていると思われる国のケーススタディを見たいと言うかもしれません。製造業者は同じ業界のケーススタディを見たいかもしれません。クラウドPBX製品を検討している顧客は他の製品の展開における成功談には関心がありません。

3. バイヤーズジャーニーをターゲティングする

主要なタイプのコンテンツが判明したら、それらのコンテンツをバイヤーズジャーニーにマッピングすることを強くお勧めします。「バイヤーズジャーニー」という用語は、購入者が歩む体験の道のりを意味しています。バイヤーズジャーニーは購入者が企業とその製品について初めて知ることから始まります。やがて購入者は営業担当者と関わりを持ち、顧客になります。次に、継続的な関係が生まれ、購入者はそこで契約/サブスクリプションを更新するか、追加の製品を購入することを望みます。前述のセールスファネル(販売のじょうご)のようなモデルを使用してこのジャーニーを説明することがよくあります。

セールスイネーブルメントでは、セールスチームが関与するセールスサイクルの後半に的を絞ります。多くの企業が自社のCRMシステムで機会のステージを定義することによって、このフェーズ中のバイヤーズジャーニーの正式な説明を作成しています。たとえば、以下は代表的なステージの集合です:

セールスファネル

これらのセールスステージはバイヤーズジャーニーの不完全な近似である点に注意してください。ほとんどの場合は、営業担当者のジャーニーと言った方がより正確です。CRMツールの重点は、通常、個々の商談の進展の追跡調査と、その商談がまとまる見込みの予測に置かれます。セールスステージは購入者の観点を完全に反映していないことがよくありますが、出発点としては有効です。セールスステージは、通常、商談がたどるステージを示しますが、多くの組織では、それが明確に定義されており、一貫して追跡されます。

コンテンツの整理ではなく、コンテンツのターゲティングにステージを使用する

既に注意を促しましたが、セールスステージは通常、トップレベルのコンテンツを整理する手段には適していません。なぜなら、マッピングが曖昧すぎるからです。商談の各ステージでどのアイテムがセールスレップによって使用されるかを考えるときにその意味が明らかになります。たとえば、会社が作成したケーススタディについて考えてみましょう。購入者にとってケーススタディはさまざまな目的に役立ちます。ケーススタディは、ある会社が実際の企業の現実の問題を解決しているという信頼性の証しであり、その会社の製品が課題の取り組みに使用されたことを示す使用事例であり、購入者に提供されるビジネス価値を浮き彫りにする資料です。

購入者はセールスサイクル全体を通じてケーススタディを要求する可能性があります。購入者は、売り手企業が検討に値する信頼できるベンダーかどうかを見極めるために商談の早いステージでケーススタディを見たいと考えるかもしれません。リード獲得ステージや絞り込みステージでケーススタディの話が出ることもあり得ます。自社の製品が購入者の問題に対する的確なソリューションであるかどうかを判断することが目標である発見ステージでは、売り手企業が購入者のために何ができるかを知るために購入者がケーススタディを要求することがあります。実証ステージは、顧客がケーススタディを要求することが「明確に」予想されるステージです。しかし、製品の購入に資金を使うことを経営陣に納得させるために顧客が交渉ステージでケーススタディを要求することもあります。商談のクロージング後は、(受注に成功した場合は)製品の利用範囲を拡大して、より多くの価値を得ることを顧客に納得してもらうために、(受注できなかった場合は)売り込みを最初からやり直すためにケーススタディを利用することがあります。

したがって、ステージごとにコンテンツを整理しようとしていた人は、ケーススタディをすべてのステージに組み込むべきだと主張するかもしれません。これはやや極端なケースですが、複数のステージでコンテンツが役立つことはよくあるので、セールスステージはトップレベルのコンテンツを分類する手段として不適切です。コンテンツがセールスステージごとに分類されていると、パブリッシャーはコンテンツをどのステージに分類すればよいか常に悩み、セールスレップはどのステージでコンテンツを探せばよいのかわかりません。

ただし、セールスステージごとにコンテンツをターゲティングすることは非常に有用です。目標は特定の商談に役立つ可能性が最も高いコンテンツを推奨することです。役に立つ可能性があるすべてのコンテンツを予測することは不可能であり、それを目指すべきではありません。だからシステムは検索と閲覧に対する大きなサポートを備えている必要があるのです。顧客はあらゆる種類のトピックについて質問を発しますが、自分の要求を「適切な」セールスステージにきちんと振り分けてくれるわけではありません。しかし、たいていの場合は、特定の商談と関連がある可能性が非常に高い少数のコンテンツがあります。ターゲティングの目標はそれらのアイテムを営業担当者がすぐ利用できるようにすることです。

セールスステージは、多くの場合、セールスレップが必要とする可能性が最も高いコンテンツを示す最適な指標です。商談が実証ステージにあれば、同様の商談で得られた顧客の証言が話題になる可能性が非常に高くなります。しかし、検討事項はセールスステージに限られません。顧客の属する業界によってコンテンツが変わることもあります。ターゲットになることが多い業界にカスタマイズされたピッチデッキが存在するかもしれません。あるいは、地域によってコンテンツが変わることもあります。スペインのチームが製品のピッチに使用しているデッキは、アメリカで使われているデッキとはおそらく異なるでしょう。適切なコンテンツはユーザーの役割によっても異なる可能性があります。既存の顧客のアカウントをサポートし、育成しているアカウントマネージャーは、売り手企業のことを聞いたことがない新規顧客にピッチしているアカウントエグゼクティブとは異なるコンテンツを使用するでしょう。

事業によって異なりますが、商談の広範な特性、顧客または営業担当者に基づいてターゲティングが行われる可能性もあります。では、セールスレップに提示するコンテンツをどうやって決めればよいのでしょうか。

「7のルール」

企業は最初にコンテンツのターゲティングを考えるときに、非常に曖昧な目標からスタートすることがあります。ターゲティングの担当者は、タッチダウンに向かうレシーバーが伸ばした手に正確にボールを落とすクォーターバックのスター選手のように、このうえなく的確なコンテンツをピンポイントの精度で渡すことを思い描きます。再現性が高く、高度に制御された非常に系統立ったセールスプロセスを持っていればそれが可能かもしれませんが、たいていの場合は、基本からスタートし、時間をかけてそれを精緻化する方が良い結果が得られます。

ここでは「7のルール」と呼ばれる手法を利用します。最初に特定の営業担当者と特定の商談を選びます。たとえば、電気通信会社にクラウドPBX製品をピッチしているアメリカ西部のアカウントエグゼクティブがいるとします。商談は現在発見ステージにあります。セールスイネーブルメントソリューションが得る情報はCRMシステムによって高い信頼性でキャプチャーされる商談に関する情報であるため、商談について知ることができるのはその情報に限られます。この手法では、営業担当者の目の前に提示する必要があるコンテンツの集合を考えます。コンテンツの数は7個以下でなければなりません。アイテムは、特定のドキュメントでも、関連がある可能性が最も高いものに絞り込まれたアイテムの集合へのリンクでもかまいません。

この例では、さらに自らを厳しく律して、アイテムの数を6個に限定しましょう:

セールスイネーブルメントのコンテンツターゲティング

このように例をいくつか挙げれば、全般的なターゲティングプランを作成する準備が整います。全般的なターゲティングプランでは、さまざまな特性に基づいて、パイプライン内の任意の商談向けにターゲティングされるコンテンツを記述します。ターゲティングプランの一部が含まれた事例を以下に示します:

セールスイネーブルメントのコンテンツターゲティング

前述のように、基本から始めることをお勧めします。ターゲティングが稼働した後は、いつでもターゲティングを精緻化し、拡張することができ、アナリティクスを利用して、どの推奨アイテムが実際に現場で使用され、成功を収めたかを確認できます。

ターゲティングされたコンテンツが機会の一部としてCRMシステムに表示されれば、使用される可能性が大幅に高まります。セールスレップは、現在進めている商談に合わせてカスタマイズされた、自分が必要とする可能性が非常に高いコンテンツにいつでも瞬時にアクセスできます。プラットフォームはデータサイエンスを利用してターゲティングされたすべてのコンテンツをスコアリングし、同様の商談でセールスチームが使用して効果があったものに基づいて、追加のアイテムを提案することができます。

4. 既存のリソースをカタログする

最後のステップは、会社が既に導入しているセールスイネーブルメントソリューションと関連があるシステムを理解することです。

よくあるシステムの例を以下に示します:

コンテンツストレージ

企業は、多くの場合、コンテンツが現在保存されている広範囲にわたるシステムを持っています。企業はDropbox、Boxなどのクラウドファイルシステムを使用している可能性があります。カスタムウェブサイト、つまりSharePointサイトを企業が持っていることもあります。コンテンツがCRMシステム(Salesforceのコンテンツタブなど)に保存されていることも、ChatterやYammerなどのさまざまなソーシャルネットワークの内部でリンクされていることもあります。

これらのシステムをソリューションと統合することができます。クラウドファイルシステムとソーシャルネットワークはパブリッシングプラットフォームの必然のパートナーです。展開後は、コンテンツストアの一部をリタイアさせることがあります。

ID

企業は従業員に社内システムまたは社外システムへのアクセス権を与えるために、社内でActive Directoryを使用したり、OktaなどのフェデレーションIDプロバイダーを使用することがあります。シングルサインオンはソリューションの管理コストを軽減する便利な方法です。

CRMシステム

たいていの企業はCRMシステム(Salesforce.comなど)を使用して販売機会を追跡します。セールスイネーブルメントシステムをCRMシステムと密接に統合することによってセールスレップの有効性を向上させ、コンテンツとレディネスへの投資のビジネスインパクトを測定することができます。

人事管理システムと学習管理システム

専門システム(SuccessFactorsやWorkDayなど)を介して研修とパフォーマンスを管理することができます。専門システムをソリューションの他の部分と統合することもできます。

ウェブ会議

WebEx、GotoMeeting、join.meなどのシステムを利用すれば、営業担当者はインターネットを介してリモートから顧客に素材を提示することができます。セールスイネーブルメントソリューションにこのテクノロジーが組み込まれていることもあります。ウェブ会議を利用すれば、セールスレップは、どこからでも顧客と接触して、プレゼンテーションやデモを行うことができます。